2016年1月、荻野目洋子さんをゲストにお迎えしてスタートした『午前0時の歌謡祭』。毎回様々なテーマで歌謡曲の魅力をお届けしてきましたが、おかげさまで7周年を迎えることができました。いつも番組を応援してくださるリスナーの皆様に改めて感謝申し上げます。
さて、2023年1月は化粧品会社の春のキャンペーンソングを特集しました。コロナ禍が4年目、ウクライナへの侵略がもうすぐ1年、それに伴うエネルギー不安と物価上昇など、明るいニュースが少ない昨今、新年くらいは華やいだ気持ちになれる内容にしたいと考え、組んだプログラムです。
昭和50年代から平成初期にかけて、年が明けるとテレビから化粧品各社の春のキャンペーンソングが流れてきました。そのほとんどが一足早い春の到来を告げる、心浮き立つオシャレなポップス。人目を引くモデルと、一風変わったキャッチコピーも毎回話題となりました。近年は当時の歌を再起用したCMも制作されていますが、それは時代を超えて聴く者を惹きつける魅力がある証し。今回は皆様に寄せられたリクエスト曲を中心に、1974年から93年までの「春キャンソング」をセレクトし、春爛漫のひとときをお送りしました。


<PLAYLIST>
01資_くちびるヌード
01.「くちびるヌード」高見知佳(1984)
作詞・作曲:EPO 編曲:清水信之
オープニングは昨年(2022年)12月21日に訃報が届いた高見知佳さん(享年60)への追悼を込めて、代表曲をセレクトしました。資生堂84年春のキャンペーンソングで、作詞・作曲は前年の春ソング「う、ふ、ふ、ふ、」をヒットさせたEPO。オリコン16位まで上昇し、自身最大のヒットを記録しました。EPO自身も「くちびるヌード・咲かせます」(84年のアルバム『HI・TOUCH-HI・TECH』収録)というタイトルでセルフカバーしています。

BGM.「赤い花みつけた」小坂 忠(1974)
作詞:小野田隆雄 作曲:Paul Williams 編曲:瀬尾一三
化粧品会社が季節ごとに大々的なキャンペーンを展開し始めたのは70年代中盤。本作は資生堂74年春のキャンペーンソングで、作曲はカーペンターズの「愛のプレリュード」「雨の日と月曜日は」を手がけたポール・ウィリアムズ、コーラスはオフコースが担当しています。のちにフォークグループの“赤い花”によってレコード化されました。

03資_オレンジ村から春へ
BGM.「オレンジ村から春へ」りりィ(1976)
作詞・作曲:りりィ 編曲:国吉良一
74年に「私は泣いています」を大ヒットさせたりりィのシングル「家へおいでよ」(オリコン最高14位)のB面に収録された資生堂76年春のキャンペーンソング。彼女のバックバンド“バイ・バイ・セッション・バンド”のキーボーディストだった国吉良一が編曲を担当しています。りりィは前年も資生堂春のキャンペーンソング「春早朝」を歌っていましたが、同曲もシングル「しあわせさがし」のB面に収録。当時の音楽界にはタイアップ曲をシングルA面にするのは避ける傾向がありました。

04資_マイ・ピュア・レディ
02.「マイ・ピュア・レディ」尾崎亜美(1977)
作詞・作曲:尾崎亜美 編曲:松任谷正隆
当時23歳の小林麻美がモデルを務めて話題を呼んだ資生堂77年春の口紅「クリスタルデュウ」のキャンペーンソング。前年にデビューした尾崎亜美の3rdシングルで、松任谷正隆によるアレンジがお洒落なボサノヴァ調のナンバーです。オリコン4位まで上昇し、化粧品の春ソングで初のトップ10ヒットとなりました。

05カ_愛の女王蜂
BGM.「愛の女王蜂」塚田三喜夫(1978)
作詞:松本 隆 作曲:三木たかし 編曲:若草 恵
石坂浩二主演の映画版・金田一耕助シリーズの第4弾『女王蜂』(78年2月公開/監督:市川 崑)とタイアップしたカネボウが78年春に展開した「女王蜂のくちびる」キャンペーンのイメージソング。カネボウのCMでは映画でヒロインを演じた新人・中井貴恵がキャンペーンモデルを務め、華々しいデビューを飾りました(ちなみに弟の中井貴一がデビューするのは81年です)。オリコン最高55位。

06カ_春咲小紅
03.「春咲小紅」矢野顕子(1981)
作詞:糸井重里 作曲:矢野顕子 編曲:ymoymo
81年春のカネボウ「レディ80 ミニ口紅」のキャンペーンソング。当時、カネボウが中国に進出していたことから、キャッチコピーもサウンドも中国風となっています。編曲の“ymoymo”はYMOの3人+大村憲司・松武秀樹・矢野顕子の総称。オリコン5位のヒットを記録し、資生堂陣営の「ニートな午後3時」(松原みき/オリコン最高26位)を圧倒しました。モデルを務めた林 元子は現在、P&Gの吸水ケアブランド「ウィスパー」のCMにも起用されています。

07ポ_Hey Lady優しくなれるかい
BGM.「Hey Lady 優しくなれるかい」庄野真代(1980)
作詞・作曲:庄野真代 編曲:瀬尾一三
化粧品の季節キャンペーンは長らく資生堂とカネボウが中心でしたが、79年に創業50周年を迎えたポーラが参入。第1弾「私のハートはストップモーション」(79年/桑江知子)に続く春のキャンペーンに起用されたのが本作でした。庄野真代はかねてから計画していた世界一周の旅に出るため、チャート上昇中に日本をあとにしたものの、オリコン最高6位をマーク。ポーラにとって初のトップ10ヒットとなりました。

08資_不思議なピーチパイ
04.「不思議なピーチパイ」竹内まりや(1980)
作詞:安井かずみ 作曲:加藤和彦 編曲:加藤和彦、清水信之
のちにマリアン名義でタレントして活躍するメアリー岩本がモデルを務めた資生堂80年春の「ピーチパイ」キャンペーンに起用された4thシングル。竹内まりやにとって初のトップ10ヒット(オリコン3位)で、お茶の間にも知られる存在となりました。当時のメディアは同時期のキャンペーンソングを担当した庄野真代、竹内まりや、渡辺真知子のイニシャルから、3人を“3M”と呼んでいました。

09カ_唇よ、熱く君を語れ
05.「唇よ、熱く君を語れ」渡辺真知子(1980)
作詞:東海林 良 作曲:渡辺真知子 編曲:船山基紀
松原千明がモデルを務めたカネボウ80年春の「レディ80口紅」のキャンペーンに起用された7thシングル。オリコンで4位、TBS系『ザ・ベストテン』では2位まで上昇し、渡辺真知子の代表作となりました。2020年1月からオンエアされたカネボウのCM「I HOPE編」ではクリスタル・ケイが歌うカバーバージョンが起用され、40年ぶりの“復活”が話題を集めました。

10_2資_ROSECOLOR
BGM.「ROSÉCOLOR」中山美穂(1989)
作詞:康 珍化 作曲:CYNDI 編曲:鳥山雄司
平成最初(89年)の資生堂春のキャンペーンソングで、自身5作目のオリコン1位を獲得した15thシングル。中山が資生堂のキャンペーンに起用されるのは、86年春の「色・ホワイトブレンド」、86年秋の「ツイてるねノッてるね」に続く3度でした。そのすべてでモデルも務めていることから、いかに重宝されていたかが窺えます。

11カ_吐息でネット
06.「吐息でネット。」南野陽子(1988)
作詞:田口 俊 作曲:柴谷俊彦 編曲:萩田光雄
南野本人がモデルを務めた88年春のカネボウ「春のバザール」と「BIOフィットネット口紅」のキャンペーンに起用された11thシングル。自身6作目のオリコン1位獲得し、ナンノ最大のヒットを記録しました。88年のカネボウは夏のキャンペーンに浅香 唯、秋のキャンペーンに工藤静香をモデルと歌の両方で起用し、アイドル路線をひた走ります。

12資_ベイビーリップス
07.「ベイビーリップス」麻倉 晶(1993)
作詞:鐘ヶ江哲郎、キンボ、森 健次 作曲・編曲:岩崎 工
当時、宮沢りえ、観月ありさとともに“3M”と呼ばれていた牧瀬里穂がモデルを務めた93年春の資生堂「レシェンテ」のキャンペーンソングです。“斉藤さおり”名義からの改名第1弾シングルで、オリコン22位をマーク。麻倉にとって最大のセールスを記録しました。なお、90年代中盤になると、消費者の多様化もあって化粧品各社の季節キャンペーンは収束に向かいます。

13カ_君は薔薇より美しい
08.「君は薔薇より美しい」布施 明(1979)
作詞:門谷憲二 作曲・編曲:ミッキー吉野
カネボウ79年春のキャンペーンに起用された43rdシングル。オリコン8位、TBS系『ザ・ベストテン』では4位まで上昇するヒットとなり、紅白歌合戦で4回歌唱されるほどの代表作となりました。布施はこのCMが縁で、モデルを務めたオリビア・ハッセーと80年に結婚します(その後、離婚)。今年(2023年)の元日よりオンエアが始まったカネボウの新CM「希望よ、超えてゆけ。」編ではW-indsの橘 慶太が歌うカバーバージョンが起用され、再注目を浴びています。


《イントロクイズ解答》

21カ_くちびるNetwork
「くちびるNetwork」岡田有希子

22カ_シンデレラは眠れない
「シンデレラは眠れない」ALFEE

23資_い・け・な・いルージュマジック
「い・け・な・いルージュマジック」忌野清志郎+坂本龍一

24カ_Rock'n Rouge
「Rock’n Rouge」松田聖子

25カ_水のルージュ
「水のルージュ」小泉今日子