FMおだわら「午前0時の歌謡祭」

2016年1月よりFMおだわら(87.9MHz)で放送開始。 歌謡曲愛好家の濱口英樹が、時にアーティストやプロデューサーをゲストに迎え、楽しいお喋りとともに歌謡曲の魅力をお届けします。 放送は毎月第3日曜24~25時(再放送:第4日曜24~25時)。 インターネットを通じて全国でお聴きいただけます!

■FMおだわら(87.9MHz)『午前0時の歌謡祭』
放送時間:毎月第3・第4日曜日24:00~25:00
パーソナリティー:濱口英樹(歌謡曲愛好家/ライター)

番組Twitter:@0jikayou
ハッシュタグ:#0時歌謡


≪今後の放送予定≫

第124回放送
「KING OF IDOL 田原俊彦の世界」
・本放送:7月20日(日曜日) 24:00 ~ 25:00
・再放送:7月27日(日曜日) 24:00 ~ 25:00

・ゲスト:畭尾裕俊さん(TBSグロウディア 映像プロデューサー)
・コメントゲスト:竹本孝之さん
・コメントゲスト:宮苑晶子さん

≪聴取について≫
コミュニティ放送局「FMおだわら(87.9MHz)」、もしくは、インターネットの「JCBAインターネットサイマルラジオ」を通じてお聴きいただけます。
※スマートフォンからアプリ無しで聴取可能です。
※Androidをご利用の方は、「Adobe Air」(無料)、「ストリーミング動画ビューワー」(無料)のインストールが必要となります。

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前月お届けした「戦前・戦中の歌謡曲」に続く昭和100年企画の第2弾。今月は「昭和53年の『ザ・ベストテン』」と題し、テレビ界に革命を起こした『ザ・ベストテン』(TBS系)の初年度にスポットを当てました。ゲストは雑誌『昭和40年男』の創刊編集長で、現在は「昭和100年祭」「昭和びと秘密基地」「還暦維新」の各ブランドを主宰する一方、イベントのプロデュースや執筆、コラボ企画などを展開している北村明広さん。本年4月に出版した初著作『俺たちの昭和後期』(ワニブックス)が早くも重版がかかるヒットを記録していますが、今回はその著書で北村さんが取り上げているテーマをお借りする形で番組を構成しました。

昭和53年(1978)1月にスタートした『ザ・ベストテン』はハガキリクエスト、レコード売上、ラジオリクエスト、有線放送の4要素をもとに集計されたランキングの上位10曲を毎週紹介する画期的な音楽番組。オーガナイザー濱口と同い年の北村さんはロックを愛するミュージシャンでもありますが、開始当時は小学6年生で、毎週ワクワクしながら視聴していたといいます。中学に入ると洋楽に傾倒していったので、その直前の絶妙な時期に番組と出合ったことが「昭和53年の『ザ・ベストテン』」にフィーチャーするきっかけとなったようです。

今回はその北村さんがM02~M09の8曲をセレクト。オープニングとエンディング、そしてBGMとして流れた歌は濱口の選曲でお届けしました。


俺たちの昭和後期_書影
北村明広『俺たちの昭和後期』
出版社:ワニブックス
発売日:2025年4月9日
仕様:新書判264ページ

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昭和100年祭/昭和びと秘密基地/還暦維新 プロジェクト
公式サイト:https://showa100th.com/

<PLAYLIST>
01_1風の駅
01.「風の駅」野口五郎(1977)
作詞:喜多條 忠 作曲・編曲:筒美京平
昭和53年(1978)1月19日放送の第1回で10位にランキングされた25thシングル。番組名物のミラーゲートを最初に通った歌手は野口五郎でした。この年、五郎さんは本作のほかに「愛よ甦れ」(最高5位)、「泣き上手」(同6位)、「グッド・ラック」(同6位)の4曲がランクイン。通算22回のベストテン入りを果たしました。

02_1微笑がえし
BGM.「微笑がえし」キャンディーズ(1978)
作詞:阿木燿子 作曲・編曲:穂口雄右
昭和53年(1978)4月4日の「ファイナルカーニバル」(後楽園球場)を最後に解散したキャンディーズは第1回から7週連続で「わな」(最高2位)がランクイン。1週おいて17thシングルの本作が13週間ベストテン入りし、通算7週の1位を獲得しました。解散に向けて全国でファンの集いやコンサートを開催するなど、超多忙な彼女たちを『ベストテン』は中継を駆使して追いかけましたが、日ごとに人気が加速していく3人の姿をほぼ毎週とらえたことが番組への注目度を高めることに繋がったと言えるでしょう。

03_1わかれうた
02.「わかれうた」中島みゆき(1977)
作詞・作曲:中島みゆき 編曲:福井 峻、吉野金次
今、売れている10曲が紹介される画期的な歌番組としてスタートした『ベストテン』ですが、それゆえテレビ出演を拒否するアーティストの楽曲がランク入りしたときは「交渉しましたが、残念ながらご出演いただけません」と司会者が頭を下げることになりました。第1回の4位以降、5週連続でランキングされた本作は出演拒否の第1号。中島みゆきは平成元年(1989)の番組終了までに5曲がベストテン入りしましたが、1回も出演することはありませんでした。

04_1シャドー・ボクサー
03.「シャドー・ボクサー」原田真二(1977)
作詞:松本 隆 作曲:原田真二 編曲:後藤次利
「10位以内に入れば複数の曲を歌える」ことを最初に知らしめたのが当時19歳の原田真二でした。昭和52年(1977)に3ヶ月連続シングル発売という形で鮮烈なデビューを飾った真二さんは1st「てぃーんずぶるーす」(最高11位)に続く「キャンディ」(同5位)で第3回(2月2日)に初登場。その2週後の2月16日に本作(同5位)もベストテン入りし、3週連続で2曲同時ランクインを果たしました。この年、真二さんは4曲で22回ランキングされています。

05_1迷い道
BGM.「迷い道」渡辺真知子(1977)
作詞・作曲:渡辺真知子 編曲:船山基紀
『ベストテン』がスタートした昭和53年(1978)は“ニューミュージック”と呼ばれたフォーク/ロック系のバンドやシンガーソングライターが続々とブレイク。前年11月に本作でデビューした渡辺真知子もその一人でした。3月16日放送回で9位に初登場した本作は最高6位で9週連続ランクイン。真知子さんはその後も「かもめが翔んだ日」(同6位)、「ブルー」(同9位)とヒットを重ね、年間で通算22回のベストテン入りを果たしました。

06_1時間よ止まれ
04.「時間よ止まれ」矢沢永吉(1978)
作詞:山川啓介 作曲:矢沢永吉
中島みゆきに続いて出演が叶わなかった矢沢永吉の5thシングル。資生堂夏のキャンペーンソングとしてオリコン1位を獲得した本作は6月1日以降、9週連続ランクイン(最高4位)。同年夏のカネボウのキャンペーンソングに起用されたサーカス「Mr.サマータイム」(同4位/オリコン1位)も大ヒットしたことから、化粧品CMがヒットの登竜門として注目を高めることになりました。永ちゃんは昭和57年(1982)に「YES MY LOVE」(同7位)もベストテン入りしますが、やはり出演はありませんでした。

07_1季節の中で
05.「季節の中で」松山千春(1978)
作詞・作曲:松山千春 編曲:清須邦義
グリコ「アーモンドチョコレート」のCMに起用された松山千春の5thシングル。5位に初登場した11月2日以降、12週連続でベストテン入りし、そのうち7週で1位を獲得しました。当時はテレビ出演を拒否していた千春さんですが、初の1位となった11月16日、スタッフの説得に応じて1回だけの約束で出演。彼のテレビ初出演に日本中が注目し、番組の視聴率は初めて30%を突破しました(30.6%)。約4分間、リクエストを寄せてくれたファンへの感謝を述べたことで、スタジオに遅れて到着した山口百恵が歌う時間がなくなり、記念撮影のみに。百恵さんは頭を下げるスタッフに「分かりました」と応じたそうです。

08_1あんたのバラード
BGM.「あんたのバラード」世良公則&ツイスト(1977)
作詞・作曲:世良公則 編曲:世良公則&ツイスト
昭和52年(1977)のポピュラーソングコンテストと世界歌謡祭でグランプリを獲得したデビュー曲(最高6位)。ブルージーな曲調と関西弁の歌詞、ワイルドなアクションとボーカルで注目され、3月2日以降、5週連続でベストテン入りを果たしました。一気にブレイクした彼らはその後も「宿無し」(3週連続1位)、「銃爪」(10週連続1位)とヒットを連発。この年、3曲で35回ランキングされる新人離れした活躍を見せました。

09_1時には娼婦のように
06.「時には娼婦のように」黒沢年男(1978)
作詞・作曲:なかにし礼 編曲:萩田光雄
セクシャルで際どい歌詞が反響を呼んだ黒沢年男の19thシングル。作詞・作曲を手がけたなかにし礼も同日にシングルを発売し、オリコン最高26位をマークしています。3月9日放送回の“スポットライト”コーナーではなかにしと黒沢が揃って登場。オリコン2位まで上昇した黒沢盤は5月11日から4週連続でランキングされ(最高8位)、年間41位のヒットとなりました。

10_1勝手にシンドバッド
07.「勝手にシンドバッド」サザンオールスターズ(1978)
作詞・作曲:桑田佳祐 編曲:斉藤ノブ、サザンオールスターズ(管編曲:Horn Spetrum)
ゲストの北村さんが松山千春「季節の中で」と並ぶ衝撃を受けたと語る、サザンオールスターズのデビュー曲。発売から2ヶ月後の8月31日に新宿ロフトからの中継で“スポットライト”コーナーに出演し、上半身裸で歌う熱いパフォーマンスが評判となりました。本作は9月21日から通算10週ランキングされ、4位まで上昇。この年最後の放送となった12月28日には2ndシングル「気分しだいで責めないで」もベストテン入りを果たしました。

11_1サウスポー
BGM.「サウスポー」ピンク・レディー(1978)
作詞:阿久 悠 作曲・編曲:都倉俊一
ミリオンセラーを連発し、昭和53年(1978)を席巻したピンク・レディーの7thシングル。当時、ホームラン世界記録を樹立した王 貞治選手が登場する本作で日本歌謡大賞を受賞しました。『ベストテン』では4月6日から13週連続でランキングされ、通算3週の1位を獲得。年間8位の大ヒットを記録しました。この年、2人は5曲で47回ベストテン入り(歌手別で年間2位)。第1回から35週連続でランクインを果たす活躍ぶりでした。

12_1乙女座宮
08.「乙女座 宮」山口百恵(1978)
作詞:阿木燿子 作曲:宇崎竜童 編曲:萩田光雄
この年50回放送された『ベストテン』で45回ランキングされた(歌手別で年間3位)山口百恵の21stシングル。2月23日から10週連続でベストテン入りし、最高3位をマークしました。♪今は獅子座のあなたに夢中よ~と歌う歌詞が当時話題となりましたが、ゲストの北村さんも、オーガナイザー濱口も獅子座生まれのため、今回は本作がセレクトされました。作詞を手がけた阿木燿子によると、言葉の響きも字面もカッコいいことから、乙女が恋するのは獅子座だろうと考えたそうです。

13_1LOVE 抱きしめたい
09.「LOVE(抱きしめたい)」沢田研二(1978)
作詞:阿久 悠 作曲:大野克夫 編曲:船山基紀
日本レコード大賞の最優秀歌唱賞を受賞した沢田研二の25thシングル。オリコン最高4位でしたが、『ベストテン』では10月5日から13週連続でランキングされ、最高2位(年間11位)をマークしました。この年のジュリーは5曲で49回ベストテン入りし、歌手別では年間1位。大晦日の紅白歌合戦では自身初の大トリを飾りました。

14_1林檎殺人事件
BGM.「林檎殺人事件」郷ひろみ・樹木希林(1978)
作詞:阿久 悠 作曲・編曲:穂口雄右
TBS系ドラマ『ムー一族』の挿入歌に起用された郷ひろみと樹木希林のデュエット曲。イントロや間奏ではドラマで演じた役さながらのコミカルな掛け合いを見せ、7月13日以降12週連続のベストテン入りを果たしました。当時はハガキリクエストの比重が大きかったため、オリコンでは最高6位ながら『ベストテン』では4週連続の1位を獲得。年間10位の大ヒットとなりました。

15_1ブーツをぬいで朝食を
10.「ブーツをぬいで朝食を」西城秀樹(1978)
作詞:阿久 悠 作曲:大野克夫 編曲:萩田光雄
今回のトリは今年生誕70年の西城秀樹が初めて『ベストテン』に登場した23rdシングルをセレクトしました。第1回放送(1月19日)から9週間ランキングされた本作は当時22歳とは思えぬ色気を感じさせるナンバーで、2月9日から2週連続で1位を獲得。その背景にはハガキリクエストが圧倒的に強かったことが挙げられます。この年の秀樹さんは5曲で45回ベストテン入り。歌手別では年間3位タイの活躍ぶりでした。

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昭和100年の今年、巷ではその節目にちなんだ企画が溢れていますが、5月の『0時歌謡』は昭和元年(1926年)から20年(1945年)までの歌謡曲を特集しました。これまでNHKの連続テレビ小説(朝ドラ)の題材に合わせて古関裕而(2020年4月)や笠置シヅ子(2023年10月)を取り上げたことはありましたが、戦前・戦中の流行歌のみをご紹介するのは番組開始10年目にして初めてのこと。その頃の歌謡曲に造詣の深い林家たけ平師匠をゲストにお迎えし、“昭和歌謡”の草創期に大ヒットした曲の数々をお届けしました。

テレビでは映像が豊富な70~80年代のヒット曲や歌手にスポットが当たりがちですが、当番組ではその源流となる楽曲や歌声、作家の魅力にも折に触れてフィーチャーしてまいります。


よみがえる歌声表紙-1-768x934
林家たけ平『よみがえる歌声――昭和歌謡黄金時代』
発売日:2012年
出版社:ワイズ出版
仕様:A5判 527ページ

木久扇の昭和芸能史
林家木久扇、林家たけ平『木久扇の昭和芸能史』
発売日:2024年11月25日
出版社:草思社
仕様:四六判272ページ

09_ぶんちょう恋物語
工藤綾乃「ぶんちょう恋物語(ラブストーリー)」
発売日:2024年8月10日

<PLAYLIST>
01_1蒲田行進曲
01.「蒲田行進曲」川崎 豊、曽我直子(昭和4年/1929)
作詞:堀内敬三 作曲:Rudolf Friml 編曲:堀内敬三
サイレント映画『親父とその子』(松竹キネマ/監督:五所平之助)主題歌。原曲はオペレッタ『放浪の王者』(1925)の劇中歌「放浪者の歌」で、映画公開直前にレコードが発売されました。その後、松竹蒲田撮影所の所歌として長く親しまれ、つかこうへいの戯曲を映画化した『蒲田行進曲』(昭和57年/1982)の挿入歌に。同作に出演した松坂慶子、風間杜夫、平田 満の歌唱でオリコン55位のヒットを記録しました。

02_2カチューシャの唄
BGM.「復活唱歌(カチューシャの唄)」松井須磨子(大正3年/1914)
作詞:島村抱月、相馬御風 作曲:中山晋平
流行歌、童謡、新民謡、校歌など生涯で約2,000曲を作曲し、“日本のフォスター”の異名をとる中山晋平の出世作。島村抱月らが結成した劇団「芸術座」の公演『復活』(原作:トルストイ)の劇中歌「カチューシャの唄」として創作され、主演の松井須磨子が歌って評判となりました。「復活唱歌」のタイトルで発売されたレコードも大ヒットを記録。日本の流行歌(歌謡曲)第1号とされています。

03_1君恋し
02.「君恋し」二村定一(昭和3年/1928)
作詞:時雨音羽 作曲:佐々紅華 編曲:井田一郎
日本のレコード産業の黎明期を代表するヒット曲です。当初は作曲の佐々紅華が作詞も手がけたバージョンが浅草オペラで上演されており、大正15年(1926)にソプラノ歌手の高井ルビーが歌唱したレコードが日本蓄音機商会(現・日本コロムビア)より発売。その2年後に時雨音羽が作詞したバージョンが日本ビクターより二村定一の歌唱でレコード化され、当時の記録で20万枚を超えるセールスとなりました。リバイバルブームが巻き起こっていた昭和36年(1961)にはフランク永井がカバーし、やはり大ヒット。第3回日本レコード大賞を受賞しています。

04_1東京行進曲
03.「東京行進曲」佐藤千夜子(昭和4年/1929)
作詞:西条八十 作曲:中山晋平
昭和初期の東京のモダンな風景(1番:銀座、2番:丸の内、3番:浅草、4番:新宿)を歌った本作は、菊池 寛の同名小説を映画化したサイレント映画(監督:溝口健二)の主題歌。映画タイアップを前提に制作された歌謡曲の第1号とされています。当時としては異例の25万枚を超えるヒットとなり、日本初のレコード歌手である佐藤千夜子にとって最大のセールスを記録。昭和52年(1977)上期に放送されたNHKの連続テレビ小説『いちばん星』は流行歌手第1号と言われる佐藤の半生を描いたドラマで、佐藤を五代路子(高瀬春奈から交代)、中山晋平を津川雅彦が演じました。

05_1丘を越えて
04.「丘を越えて」藤山一郎(昭和6年/1931)
作詞:島田芳文 作曲:古賀政男
古賀政男が多摩川河川敷の稲田堤へピクニックに行った際、その風景に触発されて創作した楽曲で、当初のタイトルは「ピクニック」でした。母校の明治大学マンドリン倶楽部の合奏曲として書き下ろしたため、この時代の流行歌としては異例の長さのイントロ(47秒)や間奏(59秒)ではマンドリンがフィーチャーされています。歌う藤山一郎は当時、東京音楽学校声楽部の学生でしたが、「酒は涙か溜息か」(昭和6年/1931)に続く本作のヒットでスターの座を確立しました。

06_1東京ラプソディ
05.「東京ラプソディ」藤山一郎(昭和11年/1936)
作詞:門田ゆたか 作曲:古賀政男
佐藤千夜子の歌唱で大ヒットした「東京行進曲」(昭和4年/作詞:西条八十、作曲:中山晋平)に着想を得て古賀政男が作曲したフォックストロット調のナンバー。7年前の「東京行進曲」は1番:銀座、2番:丸の内、3番:浅草、4番:新宿でしたが、門田ゆたかの詞は1番:銀座、2番:神田、3番:浅草、4番:新宿の風景を描いています。古賀に誘われてビクターからテイチクに移籍した藤山一郎は第1弾の本作もヒットに導き、同年12月公開の同名映画(P.C.L.映画製作所)で主演を務めました。

07_1国境の町
06.「国境の町」東海林太郎(昭和9年/1934)
作詞:大木惇夫 作曲:阿部武雄
藤山一郎と並ぶ国民的歌手・東海林太郎の代表曲。早稲田大学卒業後、南満州鉄道に入社した東海林は音楽の夢を実現するため、声楽家の下八川圭祐に師事し、昭和8年(1933)、大日本雄辯會講談社レコード部(現・キングレコード)と専属契約を結びます。翌年にはポリドールから発売した「赤城の子守唄」と「国境の町」が立て続けにヒット。当時35歳の東海林は一躍スターダムにのし上がります。満州国境をイメージして創作された本作は大陸歌謡ブームの火付け役となりました。

08_1緑の地平線
07.「緑の地平線」楠木繫夫(昭和10年/1935)
作詞:佐藤惣之助 作曲:古賀政男
たけ平師匠の“推し歌手”の一人である楠木繫夫は東京音楽学校を経て昭和4年(1929)に本名の“黒田進”名義で流行歌手としての活動を開始。昭和9年(1934)に古賀政男を迎えたばかりのテイチクの専属歌手となり、楠木正成を敬愛する南口重太郎社長から“楠木繫夫”と命名されました。昭和10年(1935)以降は古賀が作曲を手がけた「白い椿の唄」「ハイキングの唄」「男のまごころ」「人生劇場」などでヒットを連発。オールトーキーの日活映画『緑の地平線』の主題歌に起用された本作はのちに多くの歌手がカバーするスタンダードソングとなりました。

<Informationコーナー>
09_ぶんちょう恋物語
08.「ぶんちょう恋物語(ラブストーリー)」工藤綾乃(2024)
作詞:柴田 徹 作曲・編曲:山口岩男
山形県出身の工藤さんは2010年、「弦 哲也 北区(きた)の演歌座2010」新人歌手発掘オーディションで大賞を受賞し、2014年1月に「さくらんぼ恋しんぼ」でデビュー。弦哲也の秘蔵っ子として“工藤あやの”名義でシングル8作を発表後、デビュー10周年の2024年に個人事務所を設立し、本名の“工藤綾乃”名義で活動を始めました。本作は独立後の第1弾シングルでプロデュース・作曲・編曲はシンガーソングライターの山口岩男、作詞は元NHK山形のアナウンサーの柴田徹。いずれも山形出身者で、仙台市青葉区にある歓楽街、国分町(通称“ぶんちょう”)を舞台にしたGS調のナンバーに仕上がっています。

10_1旅の夜風
09.「旅の夜風」霧島 昇、ミス・コロムビア(昭和13年/1938)
作詞:西条八十 作曲:万城目 正
川口松太郎の小説を原作とする松竹映画『愛染かつら』(監督:野村浩将、主演:田中絹代、上原 謙)の主題歌。同作はすれ違いを描いたメロドラマの傑作として何度も映像化されていますが、映画のクライマックスで本作が効果的に使用されたことも功を奏し、映画も歌も空前のヒットを記録しました。当時は前年7月の盧溝橋事件に端を発する日中戦争下だったため、作詞の西条八十は内務省から「非常時に軟弱である」と検閲が入ることを避けるため、“男柳”や“ほろほろ鳥”に仮託して泣きを表現しています。歌う霧島 昇とミス・コロムビア(松原 操)は本作のデュエットが縁となり、翌年に結婚しました。

11_1暁に祈る
10.「暁に祈る」伊藤久男、コロムビア男声合唱団(昭和15年/1940)
作詞:野村俊夫 作曲:古関裕而
戦意高揚映画『征戦愛馬譜 暁に祈る』(監督:佐々木 康)の主題歌として創作された戦時歌謡。2020年上期のNHK連続テレビ小説『エール』でも描かれた福島三羽ガラス(いずれも福島県出身の野村俊夫、古関裕而、伊藤久男)による作品で大ヒットを記録しました。陸軍省肝煎りの映画だったため、作詞の野村は7回も書き直しを命じられ、その際に漏らした「あ~あ」というため息が歌い出しに使われたエピソードが知られています。

12_1一杯のコーヒーから
BGM.「一杯のコーヒーから」霧島 昇、ミス・コロムビア(昭和14年/1939)
作詞:藤浦 洸 作曲:服部良一
「旅の夜風」(昭和13年/1938)の大ヒットで“愛染コンビ”と称された霧島 昇とミス・コロムビアのデュエット曲。淡谷のり子に提供した「別れのブルース」(昭和12年/1937)以降、ヒットを連発していた服部良一によるモダンなポップスです。その服部はビールが好きで、当初のタイトルは「一杯のビールから」でしたが、コーヒー党の藤浦 洸が「一杯のコーヒーから」に変更。その結果、言葉のアクセントとメロディラインが合わなくなったという逸話が残されています。

13_1新雪
11.「新雪」灰田勝彦(昭和17年/1942)
作詞:佐伯孝夫 作曲:佐々木俊一
藤澤桓夫の小説を原作とする大映映画『新雪』(監督:五所平之助、主演:水島道太郎、月丘夢路)の主題歌。太平洋戦争勃発(昭和16年12月)後でしたが、映画も主題歌も明るく健康的な作風で大衆の支持を得ました。ハワイ出身の灰田勝彦は昭和11年にビクターからデビュー。爽やかな風貌と甘い歌声で女性ファンが多く、俳優としても活躍します。戦後も「野球小僧」(昭和26年/1951)などのヒットを重ね、NHK紅白歌合戦には6回出場。71歳で亡くなった昭和57年(1982)のは追悼として新沼謙治が本作を歌唱しました。

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